現場へ! 走れSL①
午前6時半過ぎ、群馬県内のJR高崎駅近くの乗務員事務所では、出発を控えた運転士が次々と点呼を受けていた。スーツ仕立ての制服の集団にあって、襟なしの青い作業服はひときわ目立つ。この通称「ナッパ服」こそ、蒸気機関車(SL)の乗務員だけに支給される特別な制服だ。
「SLぐんま」は高崎駅を拠点に利根川沿いの上越線や信越線を走る。客車を引っ張るのは1940年製造の「D51」と49年製造の「C61」だ。
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SLが走り出すまでには手間がかかる。運転士による車両点検は、客を乗せて出発する3時間ほど前から始まる。まずは石炭をくべる火室をきれいにする「カマ替え」。指導役の高木敬雄(48)が見守るなか、新人の安田岳機(32)が火だねが残る火室内に「ポーカー」と呼ばれる火かき棒を差し入れ、灰や燃えかすをかき落とす。刺すような熱気に顔を照らされ、たちまちナッパ服に汗染みが広がる。
SLの運転は2人乗務が基本…